独白

ねえママ 大切なものは全て目に見えないって言ったよね
それは本当なの?
ねえママ 僕のたったひとつの見えない財産は見えないんじゃなくて
最初からなかったのかな?

ねえママ 自分で歩きたいだけなんだ
それだけでもう僕はどうやらはみ出してる
ねえママ 君にいろんな物あげたいのに
あの人たちが持っていっちゃって何ひとつ残ってないんだ

降りのエレベーターに吐き気を催し
不安に震える両手で全身を抱きしめる
好きだったあの人の瞳でさえ今では怖いんだ
そして癒される間もなくまた朝が来る

それでも僕は立ってる ドアが開くのを待ってる
何度もノック繰り返し 正しいかどうかも分からない
ドアが開くのを待つ

ねえママ できるだけ僕は乾いているべきだと知ってはいるんだ
ねえママ それなのに君が時々吐き出す無神経さに振り回されてる

それなりに歳はとったのに焦りばかりがつのって
何ひとつ入ってない鞄を大事に抱えて
好きだったあの街でさえあっさり手放して
そして何も片付かない間に朝が来る

それでも僕は立ってる ドアが開くのを待ってる
何度もノック繰り返し 正しいかどうかも分からない
ドアが開くのを待つ

なるべく嘘をつかないで 自分に嘘をつかないで
君さえも捨てられるとさえ
自分の場所はここじゃない ここは自分の場所じゃない
身勝手な僕を認めないで
病んだ目の人の群れに突き放して

それでも僕は立ってる ドアが開くのを待ってる
何度もノック繰り返し 正しいかどうかも分からない
ドアが開くのを待つ
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