スロウ

八月の雨と蚊の鳴くような僕の声
冷めきった珈琲が二つ黒く沈む

ゆっくり君の唇 やけのスロウに見える
「もう会えない…」なんて言わないで
小さな背中を見送る僕は
何か言いたくて探し出せなくて

サヨナラさえも言葉にできずに
繋いだ手と手 この左手は君の右手のためにあって
今もリアルに残っている君の指先を
固く結んで隣で君の顔を見ていたい

一人で歩くのが好き そんなこと言えればいい
君は 僕の知らない暮らしを 今 歩いてる

僕が君の名を呼ぶ 君が振り返る
それだけで僕は強くなれる
当たり前の事が今じゃ夢だとしても
君の面影を集めているよ

数え上げればキリがないんだけど
失くした声も抱きしめた肌も僕はそのためにあって
今日も聞こえる君の声 気付かないフリしても
はじけた日々はほどけた手の平で続いている

ずっとサヨナラさえも言葉にできずに
繋いだ手と手 この左手は君の右手のためにあって
いずれ季節が流れて君が消えればいい
言えずに残る言葉を今は胸にそっとしまって…

ああ どうせ僕は何もできずに 君が好き…

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