海の見える坂道

どうして誰より近くにいるのに何もかもが分からない
覗いた君の顔が見えない
寄せて返す波のような距離をその手と手は繰り返す
揺らめくような微熱の中にいた

海へ続く長い長い坂道は 邪魔なものをくり抜いたみたいで
押して歩くばかりの自転車も その時だけ自分を思い出す

君の後ろに座る度
背中にもたれた耳に
聞こえた切ない音

こうして誰より近くにいるからその心を分かりたい
聞こえる鼓動の意味を知りたい
腕を広げてみたら飛べそうな青と白の空の下
時を止めた写真の中にいた

海へ落ちる赤い赤い夕日に 町も人も色を変えていく
いつも下るばかりの坂道を 登ったのは何のためだったか

迫る日暮れに伸びた影 重なれば一つになった
まるで一人しかいないように

大粒の雨が零れて曇り始めた視界
好きな景色が見えない
どこまでも続いてくような気がしていたのは何故
眩しすぎた道の先

君と二人で眺めていたから何もかもが輝いて
それを消さないようにと誓った
たとえ誰より遠くへ行こうとも少しだって忘れない
いつまでもここにある約束

腕を広げてみたら飛べそうな青と白の空の下
隣にはいつだって君がいた
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