野崎情話~お光~

死ぬほど好きな 久松さんの
好いたお方は お染さま
いいえいいのよ 身を引いて
隠す涙も 恋ゆえに…
花は紅梅 匂えども
お光哀しや あぁ 野崎村

お光は久松さんを 心よりお慕い申し上げておりました。
久松さんと祝言を挙げた喜びも…
…あゝ たったの半時…
この世はまさに 夢まぼろしでございましょうか

このまま無理に 帰せばきっと
いのち絶つ気の お染さま
いいえいいのよ 大坂へ
行って下さい 二人して
早春(はる)は名ばかり 寝屋川の
川風(かぜ)も泣いてる あぁ 野崎村

もう誰も恨んじゃいません。尼になった今は…
お染さま久松さんの幸せを遠く野崎村より
きっと祈れます。さようなら…さようなら…さようなら…

幸せそうに 手を振りながら
笑顔まぶしい お染さま
いいえいいのよ 父(とと)さまの
つらい気持ちは わかるから
両手合わせる お光尼(あま)
処女観音(おとめかんのん) あぁ 野崎村
×