涙の九段坂

鳥居くぐれば 思わず知らず
あつい涙が こみあげる
ああ お父さん はるばると
逢いに来ました 逢いに来ました
九段坂

「お父さん。あなたが戦死なさったのは、やけつくような
裁くの戦場だったとか……水が欲しい、水を呉れと叫びつづけて
死んでしまった可哀相なお父さん……
今年はネ、おじいちゃんやおばあちゃんや皆んなで、ホラ、
こんなにたくさん裏山のお水を持って来てあげましたよ……」

砂にやかれて 乾いた咽喉(のど)に
のんで下さい この水を
ああ お父さん 長かった
辛い月日の 辛い月日の
二十年

戦さなんかは もうたくさんよ
せめて倖せ いつまでも
ああ お父さん 来年も
逢いに来ますよ 逢いに来ますよ
九段坂
×