壺坂小唄

恋のいろはを 手さぐりに
書いておしえて 三年(みとせ)越し
杖になりたや 心のつえに
三つ違いの えーえまあ 兄(あに)さんの

「あんまりです。あんまりです。沢市っあん、お目が見えないばっかりに、
世間の口に欺されて、夫の為なら、命までもと誓っている女房まで、疑う
なんて、それではあんまりこの里が可哀そうです。え、可哀そうです。」

人の噂を 真にうけて
愛憎ずかしや 悋気沙汰(りんきざた)
わけがあるなら 撲(ぶた)れもするが
割って見せたい えーえまあ この胸を

今日も聞える 壺坂の
諸行無常の 鐘の声
鏡に情けが 若しあるならば
せめて夫を えーえまあ 元の身に
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