夜の一品

夜空の 深い青さを染めつけた
幻の皿の上に
緑の葉をしきつめて ただひとり
目を閉じて 横たわれば

きこえる 遠い銀河のまわる音
ゴゴゴゴゴ 熱い祭
わたしの体にうずく 星たちが
食欲の 汗を垂らす

もう誰も ここにはいない
愛された 記憶も遠く

なぜだかわたし 涙も流さずに
夢みてる 銀のナイフ
ユリネと魚とわたし 柔肌に
しみてくる 熱いオイル

食べるなら 今夜しかない
くるおしい 旬の発熱

今まさに わたしの上に
おとずれた 黄金のとき

それでも ここには誰もいないから
星だけが はじけ落ちて
暗闇焦がす 火花のせつなさに
香りたつ 夜のハーブ
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