にぎりめしとえりまき

ある冬の雪の日じゃ
木こりがの しごとして
帰り道 ひとやすみ
ささやぶで音がした

カラスすずめもいないのに
雪がどさんと落ちる音
クマもすやすや寝とるのに
なんぞあやしい白い息

たぬきがの ひもじゅうて
ひとの子にばけていた
木の葉をの頭にの
のせてから宙がえり

寒いこどもが雪の中
腹をへらして立っている
誰ぞくだされにぎりめし
せめてくだされ いものつる

たぬきがの ばけてもの
しっぽがの 見えとった
それでもの 吾作はの
にぎりめしとりだして

どこのこどもじゃ雪の中
わけてやろうぞ にぎりめし
ふといしっぽととりかえじゃ
さぁさ手をだせしっぽだせ

たぬきはの あわてての
しっぽをのひょいと持ち
首にまき 鼻すすり
えりまきのふりをした

遠いところで かかさまが
わしをおもうて あんでくれた
たぬき色したえりまきを
はなすわけには いきませぬ

ふたりして思案した
えりまきとにぎりめし
ひもじさは おたがいじゃ
どうしたら よいのじゃろう

思案してても 雪はふる
寒いひもじぃ 日は暮れる
やがてたぬきは泣きだした
しっぽぷらぷらにげだした

吾作はの 追いかけた
にぎりめし わたそうと
えりまきは にげていく
にぎりめし 追いかける

いつか追いつけ にぎりめし
走るしっぽも つめたかろう
行けど行けども白い道
行けば行くほどひもじかろう
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