爺の海

あれを見ろよと 指さす先は
かすむ海原(うなばら) 請戸(うけど)の港
朝靄(あさもや)つんざき 目指すは漁場
タバコ燻(くゆ)らせ 顎鬚(あごひげ)なでりゃ
今日も大漁の 陽が昇る

波のしぶきの 暖簾(のれん)をくぐりゃ
遥か彼方は 双葉(ふたば)の海よ
淡い緑と 白亜(はくあ)の館
太い掛け声 波間にひびきゃ
無事でいろよと 声がする

陸(おか)の標灯(あかり)も 近くに寄れば
網を引く手に 豊漁祈る
赤銅顔(しゃくどうがお)こそ 爺(じーじ)の歴史
昔ばなしに 一花(ひとはな)咲けば
海に感謝の 戻り船
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