野ざらしの首、鬼ヶ島にて

鬼ヶ島の中央に円尾坂
坂の上の刑場にはさらし首
長い血染めの髪 風に吹かれ
さらりさらり横に流れゆく

いかなる罪犯した首であろうか
何も知らぬ旅の僧が人に問う
呉服屋の主人とその家族を
鋏で刺した女だという

かように美麗な女子(おんなご)が
なにゆえ人を殺めたか

野ざらしの女は何も語らない
嗚呼 鬼ヶ島 さらし首

咎人の供養も愚僧の務め
あくる日も訪れた円尾坂の上
首の前に先客 童(わらし)が一人
彼はいかなる者であろうか

僧の問いに童はこう答えた
この首を切り落としたのは自分だと
罪深き女だが憐れでもある
共に手を合わせ経を唱えた

女は腕のいい仕立屋で
雅(みやび)な着物を織ったという

されどもう鋏を持つ腕もない
嗚呼 円尾坂 さらし首

どんなに綺麗な着物でも
胴が無ければ着られない

野ざらしの女は何も語らない
嗚呼 鬼ヶ島 さらし首
嗚呼 円尾坂 さらし首

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