料理人

いらっしゃいませ 今日最初のお客様は若いカップル
付き合ったばかりなのか なんとなく初々しい感じ
沈黙が3秒以上続かないように話題を探して
彼氏が頑張ってる間に 僕は美味しい料理をすぐに作るよ

どんな話をしているのか 厨房からは分からないけれど
いつかはこれが思い出のディナー だから一皿に全てを注ごう

さぁ 召し上がれ「美味しいね」からこの夜を始めよう
あぁ いつの間に ロマンティックに見つめ合う二つの笑顔
また二人で食べにおいで この味は変えないでおくから

いらっしゃいませ その次のお客様は背広のグループ
今だけはネクタイも緩めて 上司の愚痴を吐く
「明日も仕事か」と5分ごとに誰かが呟き
ビールを流し込んでる間に 僕は美味しい料理をすぐに作るよ

どんな仕事をしているのか 厨房からじゃ分からないけれど
日頃の苦労 ズタボロの胃袋 少しは元気にしてあげられるかな

さぁ 召し上がれ「いただきます」さえ言わないで食らいつけ
あぁ いつまでも 終わりはないのさ この腕を磨かなくっちゃ
さぁ 召し上がれ「美味しいね」っていう笑顔が僕の生き甲斐だよ
あぁ それだけで 一人ぼっちの厨房で毎日頑張れる
またいつでも食べにおいで
この味は変えないで いつだって店は開けて
君のこと ここで待っているから
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