野菊よ

何故 彼女は 瞳を見ない
頭垂れた 日陰の花よ
誰にも知られず 雑草の中
道ばたに咲く 野菊よ

何故 彼女は 答えてくれぬ
囁きさえ 風に流され
大空見あげて 小さな生命
確かめている 野菊よ

数えきれない 煩わしさにまみれ
単純な日を 送って
眠れないで 夜をこらえた時には
朝露のような 涙する

何故 彼女は 歌を忘れた
足が乱れ 動けもしない
遠くの陽炎 追いかけ続けて
淡く色づく 野菊よ

たった一度 愛に折られ傷つき
花の重みに うつむく
微笑んで 可愛い女になって
顔をあげなよ 僕がいる

雨に打たれ 深い雪に埋れて
寒い帳におおわれ
淋しくて 淋しくて たまらぬ時も
見つめ続ける 僕がいる
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