琵琶湖周航の歌(我は湖の子)

我は湖(うみ)の子 放浪(さすらい)の
旅にしあれば しみじみと
昇る狭霧(さぎり)や さざなみの
滋賀(しが)の都(みやこ)よ いざさらば

松は緑に 砂白き
雄松(おまつ)が里の 乙女子(おとめご)は
赤い椿(つばき)の 森蔭(もりかげ)に
はかない恋に 泣くとかや

波の間に間に 漂(ただよ)えば
赤い泊火(とまりび) 懐(なつか)しみ
行方(ゆくえ)定(さだ)めぬ 浪枕(なみまくら)
今日は今津(いまづ)か 長浜(ながはま)か

瑠璃(るり)の花園(はなぞの) 珊瑚(さんご)の宮(みや)
古い伝えの 竹生島(ちくぶじま)
仏(ほとけ)のみ手に 抱(いだ)かれて
眠(ねむ)れ乙女子 安(やす)らけく

矢の根は深く 埋もれて
夏草しげき 堀のあと
古城にひとり 佇(たたず)めば
比良も息吹も 夢のごと

西国十番 長命寺
汚れの現世(うつくしよ) 遠く去りて
黄金の波に いざ漕(こ)がん
語れ我が友よ 熱き心
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