最後の電話

あなたの声がとても聞きたくて電話を開いてみたけれど
どうしてもボタンを押せないの
会えない事は分かってるから

あなたと暮らした部屋のカーテンを少し明るくしてみたけど
何故だか涙があふれてくるの
あなたの好きな色だったから

二人でよく行ったあの公園のポプラも色づいてきたけど
もうすぐあなたの誕生日ですね
風邪なんかひいてないかしら

ねぇ、どうしてなの?
こうして何で忘れられないの?
綺麗な花が咲く春はいつかやって来るの?

冷たい風が吹いている夕暮れの人で賑わう喫茶店
窓の外に歩く二人を見つけて
長い長い雨が上がったわ

明日の私たちだけの記念日に最後の電話をしてみよう
本当のサヨナラを言いたいの
出てはくれないかもしれないけど

ねぇ、そうして今
こうして全部忘れられそうで
綺麗な花が咲く春がやっと訪れそう

今日いつものあの公園のベンチで電話を開いてみたけれど
やっぱりボタンは押せなかったの

やっと思い出に変わったから

秋桜が風にゆれていた
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