桜桃忌

死ぬことばかりを 思いつめ
なんで生きよと しないのですか
玉川上水 梅雨(つゆ)にごり
繁みの道を さまよえば
ふたつのいのち 呑みこんだ
水に無情の 風が吹く

お金も出世も 縁ないが
守り通すよ この家だけは
人間失格 云いながら
こころはいつも 燃えていた
斜陽のひとの 悲しさを
水に蛍の 灯(ひ)がうつす

別れて悔いない ひとだけど
どうぞ死んでも 一緒にいたい
一蓮托生 桜桃(おうとう)の
つながるいのち しのばせて
かばいあうよに かさなって
水にさくらの 花がゆく
×