らせんの物語

月はいよいよ満ちて やわらかな船を降り
出づる場所は 光ある世界
いにしへから継がれる 二重らせんの鎖に
込められた 変わらぬ物語

豊かな 実りを その子に与えよ
雨も 燃える火も 大きく育つように
生けるもの 抱える 哀しみ 返す返す
花も 人も 色は匂へど散りぬるを

どうかこの胸の痛みを永久に消して
大地よ 私の幸の犠牲になれ

その願いは
あまりに盲目な我身への愛となれば
自らに崩れて
そこここに見え隠れ 宇宙の紡ぐメロディは
いつしかの 母の海と似て
寛大さも酷さも内に秘める命を
慰めあい 果てるまで生きよと
いにしへから継がれる 二重らせんの鎖に
込められた 変わらぬ物語
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