fragment

そよいだ草の音にざわめいた胸の奥
ふと歩みを止めた翠の波間に
揺らいでは消えゆく蒼色の幻は
忘れていたはずのあの日の残像

佇む少女は空の下
幼いその手を伸ばしては
まだ見ぬ雲の先に焦がれていた

心の形までは 薄れて触れないけど
確かに胸(ここ)に在る 私の記憶(かけら) 気付いた

そよいだ草の音が呼び覚ます故郷は
もう戻れないほど遥か地の果てに

旅立つ少女はあの日から
幼い世界を抱きしめて
幾つの分かれ道 選んだのだろう

歩んできた軌跡を示す足跡は消えても
確かに此処に居る私が 記憶(きみ)ごと連れてく
明日へ

淡い光の中 振り向きかけた少女は
刹那 強い風に跡形も無く消えた
遠ざかる記憶は 薄れて触れないけど
確かに胸(ここ)に居る ずっと共に行こう
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