糸電話

夕凪を抜け出し 醜い雨が降る
わたしの心から 悲鳴が聞こえる

こんなときあなたは
住み着いた悪魔を
両腕に抱えて連れ運ぶの

ないものねだりを重ねて 壊してしまった
いくつもの破片を繋ぐ糸を あなたは持ってた

その手が その髪が
わたしを引き止める糸で
行ってはいけないと 越えてはならぬと
何度も振り向かせた
緩んだ糸の先で ささやくあなたの言葉が
もう聞き取れないの
濁った景色を 濾過した紙コップ

あなたの指先がかさついた夜には
耳に当てた紙を少し遠ざけた

わたしの指先が余所見をする時も
聞こえない声などあるはずなかった

近づきすぎてた二人は 気付いてしまった
もう少し離れて歩いて行ける方が 楽だと

その手は その髪は
躓き転んだわたしを
泣いてはいけないと ひとりじゃないよと
何度も立ち上げてた
緩んだ糸の先で ささやくあなたの言葉が
もう聞き取れないの
濁った景色を 濾過した紙コップ

その手が その髪が
わたしを引き止める糸で
行ってはいけないと 越えてはならぬと
何度も振り向かせた
結んだ糸の先で ささやくあなたの言葉は
光にあふれてた
濁った景色を 濾過した紙コップ
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