八百比丘尼

時間は 穏やかに 留み 揺らめく
何処かで 鵺が 鳴く
罪の 贖いか 己が 宿世か
限 無き 依稀の 化生

流れる 血を 眺めて 只 立ち尽くした
彼の日の 昨日は 明日へと 逆立つ

時間の中で 夢を見て 夢幻の中で 舞い落ちる
貴女が 私に 変わって行くの

時間に 囚われた 此の身 枯らめく
誰かが 説き起す
日々の 糾いか 厭ける 虚か
敢え 無き 仮の 奇蹟

殺めた 其の 過ち 只 春を 祈り
此の儘 久しく 悔悟に 暮れても

時間の中で 夢を見て 夢幻の中で 舞い落ちる
私が 貴女に 代わって 逝くの

時代は 廻る 人は 惑う 折折に 色を変え
忘れ 難き 父の 魔道 母も 害ねた

妖 非道の 謀に 愛し 男も 失せて

呪言の 淵に 浸りて 痛める
愚かな 私を 諭す者
無限の 中に 贖るを 積みて
赦しの 暇日が 累なりて 往く

独り 長夜の 空
同じ 時間を 越えて 逝く故
閉じて 時空の 獄
変若に 生えた 前世の 私が
私を 殺しに 帰って来るの

記憶の 儘に 歪みて 廻る
遡行の 羂に 捕られて 堕ちる
閑かに 葬らる 鎖の 静寂に
あなたが 私に 変わって行くの
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