北物語

愛の切符を捨ててしまって
女ひとりが迷います
やさしさに負けそうな 頼りなさ
両の手に 荷物では
重過ぎる 重過ぎる

どうして 北へ来たのでしょう
心が冷えて
泣きながら

風が運ぶ 遠い汽笛に
はるか昔を 想います
しあわせにつつまれて いた頃を
こんな夜 ひとりでは
凍えそう 凍えそう

どうして北へ来たのでしょう
日ぐれが早く
つらいのに

窓が鏡に すぐに変わって
寒い泣き顔 うつします
巡礼をするようにたずねても
あのひとに 二度ともう
逢えないわ 逢えないわ

どうして北へ来たのでしょう
やさしいひとが
声かける
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