特攻の母

知覧(ちらん)のお母さん泣かないで。 僕達が行かなければ、
この戦争は勝てないんだ。でもきっと帰ってくる
蛍になってでも…そう言ってあの子達は、
沖縄の空に飛び立っていったのです…。

花の蕾(つぼみ)が 見た夢は
七度び空を 血に染めて
死んで見せます お母さん
ああ お母さん
会うは九段の 花のかげ

その晩、庭へ、尾を引くような淡い光が…
アーッ、やっぱりあの子だ…。

会いに来たのに 違いない
蛍が見えた おばさんと
呼んでいる様に 泣く様に
ああ 泣く様に
草の葉末の 露の上

あれから、もう何十年経ったでしょう。でも嬉しい
沖縄の空へ散った千三十六人の子供達を祀(まつ)った
観音様が出来たのです。この命…
子供達の供養に捧げていきとうございます。

君の霊(みたま)よ 安らけく
眠らせ給えと 老いの身の
杖にすがって 今日もゆく
ああ 今日もゆく
知覧(ちらん)観音 ただ涙
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