~吉良の仁吉の妻~お菊残照

照るも曇るも 生きるも死ぬも
女いのちは 連(つ)れ合(あ)い次第(しだい)
吉良(きら)の仁吉(にきち)は 侠(おとこ)の中の
男らしさに しんそこ惚れて
契(ちぎ)りかわした 夫婦雛(めめおとびな)

(浪曲)
義理と人情を 秤(はかり)にかけて
義理が重たい しがらみに
お菊哀しや はぐれ鳥

世帯かまえて 三月と十日
夢もつかの間 街道しぐれ
降ればなおさら 未練がつのる
情あやとり 乱れる心
紅い手絡(てがら)が 目に沁(し)みる

(台詞)
お菊は 伊勢(いせ)へ戻ります
でも さいごに たったひと言…
こんど生まれてきたときも
お菊は お前さん あんたの
吉良(きら)の仁吉(にきち)の 女房だよ

三河太鼓(みかわだいこ)で けじめをつけて
抱いて行きます 三下(みくだ)り半(はん)を
指にくいこむ 紅緒(べにお)の草鞋(わらじ)
お菊嘆(な)かせの 荒神山(こうじんやま)で
散って咲かせる 花もある
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