花散る下田

二すじに 道もわかれて 去り行く人の
姿も淋し 吹く風に
赤い椿が ホロリ散る
心に秘めた 折鶴も
翼破れて 片羽鳥

「鶴さん!下田の浜で、
心も身体も一緒に育ったあなたとあたし、
別れ別れになったとて悲しい時はお互いに、
見えない遠いところからでも、
夢の中でも手を取り合って、生きて行こうね……
さようなら……」

冴えかえる 月のしずくが 冷たく濡らす
磯馴れの松の うしろかげ
呼んではならぬ 人の名を
心に抱いて 夜もすがら
月も泣いたか 明烏
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