花はうつつに

闇夜に咲いた艶やかな花
隠れ雲と月の如く
瞼に秘めた夢の随に
忍びの恋うつつ…

色は匂えど届かず 揺らいだ陽炎
現れては消える君に惑わされて
唯ひとつ求めるのは確かな言の葉だけ
まるで霧を掴むように歩んだ日々

胸を打つ鼓動 舞い散る花吹雪
紅に染まれ 心を掻き乱して

彼方の空に 遙かな風に
浮かぶ想い泡沫(あわ)の如く
吐息に秘めた君の名前が
忍びの恋を呼ぶ

遠い昔を語らい頬笑む横顔
そこに居ない私だけが焦がれる季節(とき)
偽りの温もりなど要らないと呟いて
まるで霧に迷うように重ねた日々

燃え盛る焔 焦げゆく花かぐら
紅の灰の向こうに翳む夕べ

伸ばした腕に 軋んだ胸に
注ぐ想い雨の如く
睫濡らした夢の随に
忍びの恋の歌

積み上げた思い出は
今は砂となりぬれども
結ぶ契りと祈る泪は
いつか絆(ひかり)に変わる

響き合う鼓動 終わらぬ花吹雪
紅に染まれ 心を満たすように

願いが伝うなら
止まない風に消えぬ想い 永久に灯れ
小指がなぞる君の背中は
微かに熱く愛しい
艶やかな花 晴れた雲と月の如く
瞳に映る君の姿
忍びの恋は始まる、うつつに…
×