桜桃忌~おもいみだれて~

襟元に吹く風が 心地よく肌に馴染む
衣更えが恋しく思える
今年も夏が来た
帰らない青春と ともに戻らぬ人
いつもならば 忘れているのに
思い出す 桜桃忌
若さは 時として残酷で
小さな生命(いのち)さえも奪って行く
貴方は他の誰よりも素直に生きていたわ
ただ ほんの少し先を
急ぎすぎただけのこと

本棚の片隅に 貴方から借りた太宰
徒らに頁を捲(めく)れば
拙い走り書き
傾いた青春に 眩しい夏日差し
思いきり 駆け出したいけど
頼りなく 後ずさり
若さは 時として残酷で
小さな過(あやま)ちさえも引き摺って行く
貴方は他の誰よりも私を愛してくれた
ただ ゆくと知っていたなら
あんなまでに 溺れなかった

貴方は他の誰よりも素直に生きていたわ
ただ ほんの少し先を
急ぎすぎただけのこと
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