そのままの殿でいて

ふてくされた横顔 眠たそうな眼差し
コホンと咳一つ 鶲(ひたき)鳴く日暮れ

手に入れた物すべて 捨ててもかまわない
あなたが光なら わたしは影がいい

オーロラは知りませぬ 字(あざな)などいりませぬ
触れ合うよりも 見つめていたい
祈りは揺れる 灯籠の影
嗚呼 そのままの そのままの殿でいて

新緑に萌ゆる 五月の空の下
乱れそうな心 水面に誤摩化して

サララと音もなく 名付け得ぬ日々よ
舶来のキセルから 燻る白糸

ビロードの着流しで 天(あま)つ空駆け巡る
燃え盛る炎さえ 涼しく微睡んだ
祈りはいつぞ 闇に消ゆるだけ
嗚呼 そのままの そのままの殿でいて

オーロラは知りませぬ 字(あざな)などいりませぬ
触れ合うよりも 見つめていたい
祈りは揺れる 灯籠の影
嗚呼 そのままの そのままの殿でいて
×