砂漠に降る粉雪

夢なら早く、覚めてくれ
なんで俺が、こんな姿に
ここはどこ、俺はなに?
たしかに 花は 嫌いじゃないが
手のひらは 葉っぱになり
おそらく足は、根になり
今を見ている、この目は、もう
とにかく、だれか、だれか教えろ
思い出した、俺は あの日
全てがそう いやになって
町をはなれて、砂漠にきた
その気で、その気で 死ぬ気で
さまよい、さまよい、さまよい
のたれ死ぬ 覚悟だったのに
どこかで そう、思ってたんだ
そう まだ、生きていたいと

あの日、俺は狂ったように
さけび、わらい、ひざからくずれ、
首の力が、ふと、ぬけて
たおれ、そりかえり、あおむけになり
そりかえった、三ヶ月までは
覚えているさ、うっとうしくても
ただそこから記憶がない
こうなった理由がわかるか?
きっと花は咲いていたんだ
枯れる前は 輝いていた
砂漠になったの、だれのせい?
砂をつかんで、思いだした
もだえていた、かんじていた
だれかの手を にぎりしめ
そうね だれかを抱いたまま
死んだように、花になった

ただ ただ ただ 忘れ
ただ ただ ただ 生きた
ただ ただ ただ 忘れ
ただ ただ ただ 泣いた

誰もいない 砂漠に
花が一つ 突如咲いた
鮮やかに咲いた花
誰の命だけを救う

俺は、そうさ 救われたんだ
だけど そう 誰のおかげで?
神なのか、仏なのか、
そうね、そんなの愚問だな
でも 俺は 知ってた
目の前に そう花が咲くのを
あの日の あの日のことを
体だけは、覚えていた
そう 俺は 選んだんだ
そう 君も 選んだんだ
変わることも、消えることも
そして俺は 花になった
君は 命を 差し出した
俺は 命を 受けいれた
枯れた 砂漠に 俺の涙は
キセキだった、雪になった

砂漠に降る 粉雪
闇の月に 白く光る
僅かに風がなびき
雪がふいに 渦を巻いて
誰もいない 砂漠に
華が一つ 突如咲いた
鮮やかに咲いた華
誰の命だけを救う
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