この世界に、

町から町へと渡る鳥が
よそ見をしている 君の町へ
音もたてず、音もたてず
知らん顔して、舞い降りる
ふとした、君の世界に
ふとした、君の未来に
意味もなくほら、居つづける
鳴きもしないで、飛び回る
道端に、散らばる羽を
道端に、座る君が
一枚、一枚、拾っては
一枚、一枚、つむいでゆく
あきれて、見て見ぬふりを
くだらないと、通り過ぎる
人波をまた、横切って
君は羽をまた、拾い続ける

さっきまで、飛び回り
いままで、鳴きもしない
鳥たちの群れが一斉に
うねりをなして、騒ぎ出した
町中が、ざわめき出し
人の波が、崩れ出し
町ゆく人の、町ゆく人の
悲鳴が町を、埋めつくした
あぶりだす、人の心を
もてあます、人の闇を
町から町へと 渡ってきた
鳥たちが、そう、ついばみだした
目の前を、歩く人をそう
押し倒しても、逃げたいと
押しのけ、押しのけ、見た先には
変わり果てた、君の姿が

大事な、ものがほら消えてゆく
意識もだんだん 遠のいてゆく
限りなく、限りある君の
命が、ゼロになってゆく
わずかに、開いた瞳が
押しよせた、人々を眺め
かすかに、ほんのわずかに
君が笑みを、うかべたような
なんにも、無かったのさ
始めから、無かったのさ
この世界に、欲しいものは
君にとって、必要なものは
もう、何も、感じないのさ
そう、すでに、終わってたのさ
何も残さず、つむいだ羽で
別の世界へ、君は飛びたってく
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