紅い橋

海沿いの 温泉(いでゆ)の宿で
おそろいの 浴衣に着がえ
口紅を うすめにさして
くる筈もない あなたを待つの

女に 生まれて 来たからは
一度は 行きたい 向こう岸
渡れる つもりが 渡れずに
涙で にじんだ
墨絵ぼかしの 紅い橋

運命(さだめ)には 逆らいきれず
悲しみを ひとりで背負う
愛なんて 他人になれば
かげろうよりも はかないものね

尽くして 甘えて 夢をみて
幸せ いちずに 追いかけた
わたしの 心を 吹き抜ける
別れの 木枯らし
風もつめたい 紅い橋

女は 小さな 笹の舟
男の 流れに 身をまかす
おもいで うつして 水鏡
あの日は まぼろし
花は散る散る 紅い橋
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