浪花の春

一緒に暮らした ひと冬を
なかったことに してもいい
放(ほか)さんといて 夢だけは
縞の着物に 角帯みたて
男のために 女が買うた
ああ 浪花の春は どのあたり

心で泣いても 人前で
泣くのは 阿呆のすることや
教えてくれた ひとがいる
日向(ひなた)さがして 育った二人
あんたとうちは 相惚れやった
ああ 浪花の春よ 早く来い

添わせて欲しいと 掌(て)を合わせ
天神さんに 願かける
三十路(みそじ)の肩に 忘れ雪
弥生三月 大川沿いの
桜もやっと 蕾をつける
ああ 浪花の春は もう近い
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