最後のネクタイ

窓ごしにつたわる
おだやかな陽ざし
鳥の声を耳にしてる
そんな朝が訪れる

紅茶にするそれとも
言いかけては止めた
首にタオル巻いたままの
あなたを見ていた

今夜からは別々の夜
違う暮らし始めるなんて
まるでテレビのドラマの中の
人を演じるようで

何度も何度もくり返し 覚えて来たのに
互いのくせを夢を嘘を ほくろの数を
心も身体も情熱も 二人の歴史が
今から全部 今日からすべて
ああ思い出に変わる

私じゃあね元気で
あなた何も言わず
いつものよに優しい顔で
少しほほ笑んだ

ドアに向かうあなたを止めて
そっと言うのこっちを向いて
これが最後のネクタイだから
ちゃんと整えさせて

何度も何度もくり返し 覚えて来たのに
互いのくせを夢を嘘を ほくろの数を
心も身体も情熱も 二人の歴史が
今から全部 今日からすべて
ああ思い出に変わる

小さくなる後ろ姿 今なら間に合う
あの三叉路を曲がる前に この窓開けて
行かないでと告げそうになる のどを押さえたら
我慢の河が あふれて切れて
私を責めています
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