乳母車

めずらしく 晴れた日の 坂道を
あのひとと 肩並らべ歩いている
このぼくは手ぶらでも あのひとは
カタカタと 乳母車を押している

三年のとしつきが そこにある
うめられぬとしつきが そこにある
盗み見た横顔は 今もなお
あの頃の あのひとの ままだけど

風車くるくると まわり出し
おさなごが あどけなく 手を伸ばす
風が出て来たからと あのひとは
乳母車 押しながら 去って行く

三年のとしつきが そこにある
うめられぬとしつきが そこにある
ぼんやりと 見送って このぼくは
オーバーの えりを立て 歩き出す
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