ウメボシジンセイ

二月三月 花ざかり うぐいす鳴かせたこともある
五月六月 実がなれば 枝からふるい落とされて
近所の町へ持ち出され
何升何合計り売り
もとよりすっぱい この体
ウメウメウメボシとしてうまれ
ウメウメウメボシとしていきる
塩にそまって辛くなり しそにそまって赤くなる

七月八月 暑いころ 三日三晩の土用干し
思えばつらいことばかりこれも世のため 人のため
シワがよっても若い気で
小さい君らの仲間入り
運動会にもついていく
ウメウメウメボシとしてうまれ
ウメウメウメボシとしていきる
九月十月霜月と 紅葉狩りにもついていく

あっという間に年は暮れ
また一年のはじまりがひとりひとりにおとずれて
泣いて、怒って、笑うだろう

ウメウメウメボシとしてうまれ
ウメウメウメボシとしていきる
「梅はその日の難のがれ」
さいごの一粒その日まで 君らの日々に幸アレと
これがわたしのウメボシジンセイ
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