日本の母

「博正!博正ッ」

愛し子の いのち奪われ 悲しみの
淵瀬に深く 沈むとも
人を憎まず 神を信じて 頬笑み浮かべ
ああ日本の 母はここにも
生きてあり

山見りゃ悲し海を見りゃ
海の思い出また悲し
死んだわが子が生きていりゃ
いまはいくつと指を折る
母の白髪を髪の毛を
濡らす黒潮砕ける波が
岩の狭間に虹を撤く

「でもよかったと思います。あの時晃を憎んで
いたらこんな幸せはなかったかも知れませんねえ」

幸福(しあわせ)の 木の葉もかれて 裸木の
わが身の夢は 消えるとも
人を恨まず 神を信じて 頬笑み浮かべ
ああ日本の 母はここにも
生きてあり
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