辰野の雨

浴衣に着がえ 宿の下駄をかりて
いつか夕ぐれどき 少しくもり空
川沿いの道を
折れればそこは蛍
この愛に命を
あなたにすべてを賭けていたから
拭っても抑えても
涙流れてとまらない
信州辰野に さやさやとはらはらと
ほらまた雨が 雨が…

ともるぼんぼり 人に押されながら
肩をぶつけられて 渡るわらべ橋
去年はあなたと
今年はひとり蛍
身体(からだ)の痛みなら
季節がいつしか消してもくれる
でも胸に焼きついた
傷は死ぬまで残ります
山里(やまざと)辰野は 六月の梅雨の中
思い出捨てに 来たの…

この髪をおろして
おさないむかしに戻れるならば
あの人と会う前の
遠い時間に帰らせて
信州辰野に さやさやとはらはらと
ほらまた雨が 雨が…
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