帰郷

あの頃は 島には仕事もなくて
遠縁の親戚 ハガキ一枚をたよりに
着いたのは 遥かコーヒーの国
三線の音になぜか涙がこぼれた

三年働いたら 帰れるから
ふるさと想いながら 汗を流した
初めて恋をして 洋服も買った
嬉しくて 楽しくて さみしさも忘れた

カチャーシーはうまく踊れないけど
彼女がいれば恥ずかしくなかった

五年経ち もうそろそろ帰ろうかと
二人で貯めたお金を 空き缶に集めた
指輪は買えないけど 子供が生まれて
神様に誓った 幸せにしますと

カチャーシーはうまく踊れないけど
夜明けに畑で 一人で踊った

十年はあっという間で 家族も増えて
街へ出て市場の中に 店が開けた
両親に送る写真は 新品の靴を履き
ふるさとはレコードの中 廻り続けた

カチャーシーはうまく踊れないけど
息子の手をとり 肩車をして

五十年 僕は帰れないけど
孫から届いた手紙 ふるさとの写真と
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