歌の中には不自由がない

ドアを斜めに持ちあげながら 回した鍵を手応えで抜く
人質の背中に張り付いて 耳元で脅すように

そこにはそこのやり方がある 唇の柔らかさくらいに
人には人のやり方がある 知らず知らずのうちに

外は雨 どんよりと鉛色の空の下
鼻先を軽く上に向けたら 息が沁みてゆく

言葉を引き上げようと すればするだけ形づいてく
本当のことはいつでも 誰かの口で捻れて行く

歌の中には不自由がない 夜でも朝にでもなれる
疾の昔に片付いたこと 何度も向かい合える

陽が昇る それとも沈みはじめてるのか
役目のような垂直の雨が 街をたたんでく

今まで信じたこと これまで聞かされた話が
どれもこれも嘘だとしても 歌の中には不自由がない

どこか人は終わりたい 何か消しさりたい
どんな孤独さえも 歌の中には不自由がない

言葉を引き上げようと すればするだけ形づいてく
本当のことはいつでも 誰かの口で捻れて行く

今まで信じたこと これまで聞かされた話が
どれもこれも嘘だとしても 歌の中には不自由がない
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