本当のトイレの神様

社会人になって10年目 実家に暮らしている
アパートを借りようと 思うこともなく ただ実家に暮らしている

実家のトイレは古くさく いまだにしゃがみこむタイプだ
この和式トイレの掃除を 嫌がる僕に おじいちゃんがこう言った

便所には それはそれは 意地悪な 神様がいるんだなもす
なかなかふきとれない時など 神様がも一回ウンコをつけている
振り向いちゃダメヨ 振り向いちゃ

その日から僕は振り向いた 神様に会う為に
ある日振り向いて驚いた おじいちゃんが立っていた

おじいさんここでいったい何をしてるんですか
僕は今、入ってますヨ ますヨ
何をかくそうこの私が 便所の神様だ

そう言うと 僕の背中あたりが 暖かなうたせ湯のような
神様は微笑みながら ジャアジャアと 上下左右にふりながら
「おじいさん」と声をかけても 神様には届かない

あれから月日は流れ 今は ひとり暮らしさ
思い出せば おじいちゃんはボケたふりをして

僕を外(よのなか)に放り出してくれたんだネ
今、おじいちゃんは施設で 神様と呼ばれているらしい
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