花のあとさき

桜の樹さらさらと 光る風に揺れてゐる
あの散り急ぐ花の劇(はげ)しき日々
遠き夢の如く

それは貴方の そう無口な姿
悲壮(かなしみ)を封(と)じ込めて
何を見てるの? 何が見えるの?
果てぬ空の彼方

あゝ たおやかな風になりたい
心の泪 散らすよう
よるべなき想ひ 苦しみに寄り添ひたい
うららかな陽の如く
ただうたかたの季節でも

木洩れ陽のあやとりが 解(ほど)けやがて陽が
落ちる
この一日が無事に過ぎる日々が
永久(とわ)に続いたなら

けれど貴方は 其の命を削り
たゆみなく進みゆく
明日を求めて 明日へ急ぎて
見えぬ茨の道

あゝ 涼やかな風になりたい
桜の幹の傍らで
志抱き駆け抜ける人が今は
穏やかに微笑うように
この浅葱色の空の下

未来の行方 見えないまま亦(また)
道無き道を往くのなら
信じて 還る場所が此処にあること

あゝ たおやかな風になりたい
心の泪 散らすよう
よるべなき想ひ 苦しみに寄り添ひたい
うららかな陽の如く
ただうたかたの季節でも
×