野性双生児

赤い満月割る
高い絶壁の淵
墜ちる 私は誰
吠える狼の声

総毛立つ
身も心も

生きることを怯え
生まれ変わり損ねて
すでに行き場はなく
檻の向こうはどっち

愛される
獲物のように

闇を飼うその爪で
骨までも組み敷かれ
歓喜を歌うまで

彼の名はHYDE
怒りより強く
私を捕らえて
与える 力を

一人には返れない
なぜ声が上げられない
こんな苦しいのに

撓る苔(しもと)の刺
舐める傷口苦く
熔ける血濡れた牙
絶望喰むは本能

赦されぬ
罪人のように

恐れなど失って
零される涙だけ
口にして生きよう

彼の名はJEKYLL
祈りより深く
私を包んで
教える 弱さを

二人には戻れない
なぜ声が上げられない
こんな悲しいのに

彼の名はHYDE
誰より美しい
そして名をJEKYLL
何より愛おしい

どちらも私の
中に居る私
鍵のない檻の
鎖に繋がる

もう一人に返れない
もうどこにも本当の
私はいない
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