鳩のいる港町

鴎にまじって 育った鳩は
自分を鴎と 思ってた
木の実を拾わず 鰯を餌に
やがて鴎に 恋をして
添えない運命に めぐり逢う
そんな女の お店がひとつ
ぽつんと灯りを 点す港駅

波止場を塒に 育った鳩は
自分を鳩と 気付かない
港を出てゆく 外国船の
白いマストを 追いかけて
溺れてわめいて 目がさめる
そんな女の のれんが今日も
夜風にゆれてる 北の岬町

鴎にまじって 育った鳩は
鴎の声色 使ってた
それでもやっぱり 鴎にゃなれず
泣いて涙も かれたけど
あきらめ切れぬと あきらめた
そんな女の 意気地がひとつ
ぽつんと灯りを 点す港町
×