こんな私じゃなかったに

ひろい世界に ただひとり
なぜにあなたが こう可愛い
君の寝顔に 頬あてて
女ごころの 忍び泣き
こんな私じゃ なかったに

ひとり寝る夜の 夢でさえ
君と逢う日の ことばかり
熱い両手で 抱きしめる
紅の小夜着が 恥ずかしい
こんな私じゃなかったに

やっと別れて 小半丁
ゆけばあふれる この涙
逢瀬かぞえる 指さきも
ぬれてやつれて 春が逝く
こんな私じゃなかったに

君をちらりと 見た夜から
胸はもやもや 気はそぞろ
門の柳の 葉ずれさえ
あなた呼ぶよな 忍ぶよな
こんな私じゃなかったに
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