花街一代

器量がいゝから 芸者になれと
あけて十五の 旅だちでした
浮世いろはの 花街で
芸をみっちり しこまれて
いつかなじんだ 夜の水
あゝ神楽坂 おんなの灯(ひ)がゆれる

わたしが知ってる お方はみんな
出世しました 自慢じゃないが
あれが縁なら これも縁
義理と情けに はさまれて
いっそ死にたい 悲しさに
あゝ神楽坂 ながした恋もある

花街うけつぐ 若い妓(こ)ひとり
育つ日までは にくまれながら
きょうも切り火で 送りだす
おんな 一代 舞扇
どうぞ幸福(しあわせ)くるように
あゝ神楽坂 愛していきるのよ
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