君と駅までの道

「この坂道……」と 立ち止まり振り向いて
「ずっと昔……」 なんて突然 君

「ここは奇麗な丘だったの」と 呟いた
「まだ人間もいない頃」と 微笑んで

君のその眼に映る 景色は見えないけど
身ぶり手ぶり 惜しまずに俺に伝えてる
そんな君の心に 広がる景色なら
俺にも見えるね いつか

そう俺達 こんなに近くにいても
まだ 知らないことばかりだね
「なんにもいらない 傍にいて」と言った
君と駅までの道

「前髪がちょっと…… 少し切りすぎね」と苦笑い
でもえくぼは可愛くて
今日はスーツの 俺と映る駅の窓は
まるで二人の 記念写真みたいさ

「“アルバート”なんて ちょっと あの犬には変」と
俺の友達けなして 首をすくめ
「だってあれ雌だよ」って 吹き出しそうな君
また悩み一つ忘れたよ

そう俺達 わかってるのさ
二度とはいない 恋人だって事
「なんにもいらない 傍にいて」と言った
君と駅までの道
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