漂泊浪漫

人の宿命の悲しさは
浮世を憎んで船を出し
さすらい人になったとて
いつか浮世が恋しくなる

「せめて今夜は この盃に
苦い酒をば なみなみついで
そして一息に飲みほそう
そして悲しみ飲みほそう」

人の情けのうれしさは
たとえばレモンの味がして
口に含めばすっぱくて
わけもないのに泪ぐむ

「せめて今夜は この盃に
甘い洒をば なみなみついで
そして一息に飲みほそう ほら
あんたの情けを飲みほそう」

旅する男の寂しさは
夜汽車にうつる白い顔
きのうと今日にとり残されて
それでも夢追うさすらい人よ
「あなたは見知らぬ人だけれど
酒に愁いを 流してしまおう
そして一息に飲みほそう
そして宿命を飲みほそう」
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