細川ガラシャ

散りぬべき時知りてこそ世の中の
花も花なれ人も人なれ

きっと今度の 出陣が
二度と逢えない 旅になる
忠興(ただおき)殿も 分るやら
鎧(よろい)の袖に ひとしずく
武士の妻でも お玉も女
追って行きたい 大手門

「お玉は誓って
石田三成殿の人質にはなりませぬ。
徳川家康殿のために心おきなく
お仂きくだされ 忠興殿。」

三日天下と 人が言う
父は逆臣 明智殿
苦しむために 人の世に
生まれて来たか あの世から
救いたまえと お玉が祈る
笑顔やさしい 聖母(マリア)さま

「三成殿の手の者が攻めて参ったか。
お玉はガラシャと言う洗礼名を持つ身、
わが手でわが命を絶つことは叶いませぬ、
爺 早う 妾を刺し 屋敷に火を放つのじゃ!
何をためらっておる、爺
早ういたせ 早う 早う!」

生きて縄目(なわめ)に 遭(あ)うよりも
死んで遥かな 天国へ
子に別れるは 辛いけど
神から受けた 宿命(さだめ)なら
ひとり先立つ お玉の旅は
銀の十字架(クロス)が 道しるべ
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