那珂川慕情

愛を断ち切る 一人の旅は
水の彩にも 泣けてくる
好きでいながら 添えない女の
尽きぬ想いを 那珂川の
流れの底に 沈めたい

何も倖せ やれないままに
切れて離れた 恋の糸
鮎の岸辺に 寄り添いながら
夢を語った 夏の日の
笑顔が水に また揺れる

声をからして 白鷺一羽
霧にさまよう 対う岸
恋の残り火 かき消すように
山背おろしが 那珂川に
冷たい雪を つれてくる
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