忠治侠客旅

「忠治!御用だ!御用だ!
御用だ、御用だ…」
「喧しいやい、静かにしろい!義理と人情
忘れたそんな奴らに我慢ができず、
堪忍袋の緒を切った、男忠治の心意気、
たっぷり見せてやらァ!」

生まれ在所を 我が物顔に
渡る奴らは 許せねぇ
義理を表に 情けを裏に
侠客忠治が 赤城の山で
乗るか反るかの
乗るか反るかの 勝負する

「赤城の山も今宵を限り、生まれ故郷の
国定の村や縄張りを捨て
国を捨て、可愛い子分の手前(てめえ)たちとも
別れ別れになる首途(かどで)だ。
…加賀の国の住人、小松五郎義兼が
鍛えた、業物(わざもの)。万年溜の雪水に浄(きよ)めて、
俺には生涯手前という強ぇ味方が
あったのだ。」

麓囲んだ 追手の灯り
守る俺達ァ 暴れ獅子
灰になっても 親分子分
七分飲み干す 赤城の地酒
あとの三分は
あとの三分は 別れ酒

「人の運命(さだめ)は五十歩百歩。
咲くも花なら散るも花。
長い草鞋(わらじ)も承知の上で、
心の向くまま、足の向くまま、
あても果てしもねぇ旅に発つのだ。」

筋を通した この生き様も
今宵限りと 仁王立ち
小松五郎を 万年溜の
水に浄めりゃ 赤城の月が
うつす忠治の
うつす忠治の 旅姿

「たとえ世間は変わろうと、
忠治は忠治で生きていかァ。」
×