電波塔の少年

淋しさのかたちをした月が傾いて
危うく夜空に貼りついている
眠らない街の景色 僕は見下ろしてる
誰も僕には届かない

見える限りの家やビルの窓にきみがいる
数えきれないきみを ずっとずっとみつめている

街は今 魔法のように
僕のひろげた手の中で 光る箱庭に変わる
この夜をきみにあげるよ 全部きみのものだよ
僕はこんなにきみのことだけを 好きなのに

悲しみの深さなんて 何の力にもならない
心は武器にならない
ちっぽけなこの体を僕は変える
目に見えない不思議な力へと

自由に飛ぶよ 僕は電波 星も越えて行く
言葉と歌を抱いて 寒い夜の空を走る

きみへと飛ぶよ 僕は電波 星も越えて行く
言葉と歌を抱いて 寒い夜の空を走る

でもきみの受信装置 ひどく壊れている
部屋のすみにころがしたままで
もうきみはそこにいない 誰も聴いていない
ノイズだけが闇を汚してる

もう僕はどこにも
どこにもいなくなる
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