サークル

蛇口をひねって真っ白な両手洗って
面白いように記憶に騙されたことを悔いた
昨日までの私を全部剥してしまえたらいいのに
ピンセットで少しつまんで薄いガーゼのように

改札口を潜る人波に紛れてあの人が
言い難いことを何のためらいもなく口にしている
忘れっぽい私は今日もそんな景色を切り取って
机の奥しまうんだけどフィクションのような気がしない

「きっと逃れられることじゃないのさ」
「きっとまた巡ってここで立ち止まるんだろ?」

ずっと昔から止まることのないクロール
いつだって右手に隠しているのブルース
君と私との秘密よ 内緒の記号
留まることはないともう知っているの サークル

真夜中過ぎに手探りでキーをつかんでドアを開けたら
いつもの部屋は小さく声をあげたほど違って見えたの
私達が知り得ているのは結局それくらいってことで
自惚れてしまわないようにいつだって手を繋いでいて欲しい

「きっと逃れられることじゃないのさ」
「きっとまた巡ってここで立ち止まるんだろ?」

ずっと昔から止まることのないクロール
いつだって右手に隠しているのブルース
君と私との秘密よ 内緒の記号
留まることはないともう知っているの サークル

じっと私の掌で崩れるフルーツ
耳をかすめる名もなき唄はただメロウ
君も私も麻痺しちゃっているの ブルー
留まることはないともう知っているの サークル
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